7ページ目/全7ページ



   次にサンジが記憶しているのは、甲板で大の字で寝ていた自分だった。

   朝日が昇ってきたので、目が覚めたのだ。早起きのコックの習性だった。

   霧だったのが嘘のような澄み切った青空だった。

   どうしてなのか、自分のブルーのシャツが無くなっていて、上半身裸だったり、痣だらけだったりした。

   不思議な事が多かったが、二日酔いのポンコツ頭では、思い出せそうになかった。

   とにかく身体がべトついた感じ(たぶんケーキのせい)だったので、最初に入浴をすませた。

   それから、甲板の掃除(ゾロの誕生会の残骸の始末)を済ませ、朝食準備に取りかかった。

   サンジは和食が無性に作りたくなったので、ご飯と味噌汁と塩鮭に金平などを作っていた。

   「サンジ〜飯〜!!」

   いつも通り、最初に食堂にやってきたのはルフィだった。部屋へ入ると当たり前のように腕を伸ばし、

   調理途中の温泉卵を盗み取ると殻ごと口に詰め込んだ。サンジもまた当然のように、

   ルフィの腹に蹴りを入れると、口の中の卵を8個吐き出させた。

   順番に食堂にやってきたクルー達だったが。コレもいつもと同様にゾロだけがいなかった。

   (あのアホは一体、ドコにいるんだ??)

   甲板にも男部屋にもいなかった。

   「コックさん、剣士サンだったら格納庫にいるわよ」

   ロビンがお茶を飲みながら教えてくれた。なぜ、ロビンがそんな事を知っているのか知らないが。

   「優しいな〜ロビンちゃんは!教えてくれてありがとう!」

   なんて言ってみた。するとナミがこう続けた。

   「迎えに行ってあげたら? ゾロの事はサンジ君に今後は全部任せるわね」




   サンジは格納庫に向かいながら不思議に思っていた。

   (何でナミさんは、オレとゾロが<親友>だって知っているのかな? 女の勘か?)

   <男友達>から<親友>に勝手にゾロを格上げしたサンジは、歩く足取りも軽やかだった。

   到着した格納庫にはロビンの話通り、ゾロがイビキをかいて眠っていた。

   サンジはしゃがみこんでゾロの顔を覗き込んだ。それからジジシャツの胸や、

   芝生のような緑の頭をそっとつついてみた。

   サンジはゾロを見ていると、胸が暖かく膨れるような不思議な気分になる。

   さらに、鼓動が速くなって、体温がドンドン上がるような気がした。

   (酔ってもいないのに、不思議だぜ)

   (友達同志って連中は、みんなこうなのか??)

   (友達ってのは、聞いてた話よりも、ずっとスゲェ〜なあ)

   それからサンジは立ち上がると、そんな気持ちを全部込めて、ゾロの腹部を思いっきり蹴り上げた。

   「クソ剣豪、飯だぜ! 早く食わね〜と蹴り殺すぞ!」



   サンジの心には、<友情>とは違う別の何かが芽生え始めたが、本人は全く自覚していなかった。

   サンジはどこまで行ってもサンジである。アホはどうしても治りそうにない。







                     後編(ゾロ視点バージョン)へ続く。
 
                         サンジの記憶の無い部分や、ゾロ・ロビン・ナミのやり取りなど、
                         謎は全て後編で明らかにされる……かもね??




                   
                6ページ目へ戻る



               ワンピース小説目次へ戻る